マイナンバーがやってくる【おもやい通信57号より転載】

もやい事務局長 小幡邦暁

マイナンバー始まる!

この記事をお読みになられている方々の中には、既にマイナンバーの通知カードが届いている方もいらっしゃると思います。
今回は、マイナンバーの制度自体の説明ではなく、マイナンバー制度の運用が実際に始まることにより、〈もやい〉が支援の対象としている方々、いわゆる社会的弱者の方々に対する差別や排除がより一層進むのではないかという危惧があるということをお話したいと思います。

考えられる三つの危惧

この度のマイナンバー制度は、社会保障・税・災害の三分野が柱となっています。
今回は、「社会保障」に焦点を当てていきたいと思います。社会保障には、年金、健康保険、生活保護、児童福祉などの様々な分野がありますが、その様々な分野で、マイナンバーを使うことにより、「必要な社会資源を必要な人に届ける」というのがこの度の制度の趣旨です。すなわち、マイナンバーを提示することによって、余計な添付資料等に煩わされることなく、必要な支援を素早く適切に受け取れるというわけです。

確かに、それだけ聞くといかにも素晴らしいもののように思われます。
しかし、問題は、マイナンバー付与の「基準」が住民票であるということです。住民票のない方にはマイナンバーは発行されません。
実は、住民票のない方はたくさんいらっしゃいます。ホームレス状態にある方、例えば路上生活を送られていたり、ネットカフェを転々とされていたり、簡易宿泊所におられたりする方々です。
また、DV 被害に遭われ、別居されている方で、その後にお子さんが生まれ戸籍がないために住民票を作れないというように、なんらかの事情があって住民票がない方もいらっしゃいます。
本来の趣旨は「必要な社会資源を必要な人に届ける」といったものなのに、実は一番緊急に支援を届けなければならない人には届かないという現実があります。
さらに懸念されるのは、住民票があっても、住民票とは違うところで生活を送っていらっしゃる方のことです。
家族からDV や虐待を受け逃げている方、長期入院されている方、東日本大震災の被災者で避難されている方々の中にも、住民票の住所と居所が違う方が多くおられます。
そういった方にはマイナンバーの通知カードが届かない場合が出てきます。
そればかりか、DV や虐待を受け逃げている方の場合、住民登録が以前の住所のままなので、それが知られたくない相手方に渡り、二次被害が拡大してしまう可能性が出てきます。

地方自治体も「住民票上の住所地と違うところに送りますので登録してください」との案内を出しましたが、その登録期限が9月25日までだったのです。
その案内自体が、ホームページでのお知らせなどで、どのくらいの人がこの情報を知り登録できたのか非常に心もとない気がします。

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都道府県のマイナンバーに関するお知らせ

さらに、日本の社会保障の「申請主義」にかかわる問題です。
そもそも、日本では、社会保障を受ける際には「申請」をしないといけないのが原則です。
ところが、申請の際にマイナンバーを書く必要が出てきます。したがって、マイナンバーを持っていない人は申請すらできなくなる可能性があります。
生活保護の申請の際によく聞く窓口の不適切な対応として、「住民票がないから受け付けません」とか、「家族がいるのであれば家族に養ってもらってください」などというあたかも扶養義務が生活保護の「条件」であるかのような対応をされることがあります。

しかし、扶養義務は「条件」ではなく、あくまで「ご家族が援助できるとわかればその分生活保護費が減額される」といった補充的な話です。
今回のマイナンバー制度も同じようなことになる可能性があります。
生活保護の申請にあたり、「マイナンバーを書いていないので申請を受け付けません」という水際作戦がなされる可能性があります。
厚生労働省は、各地方自治体へ「マイナンバーを生活保護の申請書に書くことを求めるが、記載の有無が生活保護を受けるための条件ではない」と文書を出しています。
各地方自治体で適正な申請業務がされることを、願います。

大きく危惧しているのは以上の三点ですが、今後、パソコンで自分の情報を確認できる「マイナポータル」というサービスが始まります。
これは、パソコンを使ってインターネット上のウェブサイトにアクセスし、個人の専用ページを確認することで、社会保障などの情報を必要な方に、直接、届けるものです。
しかし、〈もやい〉に相談に訪れる多くの方々は、パソコンをお持ちでない方や操作に慣れていない方が多く、適切にアクセスして情報を得ることができるのか大変心配です。

最後に

既に述べたとおり、マイナンバーは、「必要な社会資源を必要な人に届ける」という趣旨で導入されました。しかしながら、今まで見てきたとおり、マイナンバー制度はまだまだ未成熟であり、導入の趣旨が達成されているとはいえません。
私たちは、「必要な人に必要な支援が届かない」ということが起こらないように、行政の動きをしっかり注視し必要に応じて声を上げていきたいと思います。

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