※この文章は2014~2015年の年末年始におこなった「ふとんで年越しプロジェクト」の報告書に掲載された文章です。アーカイブ的に以下にアップします。背景や状況等は、あくまで2015年の年始当時のものです。ご了承ください。

ふとんで年越しプロジェクト2014の結成

年末年始は「閉庁期間」といって、公的機関がお休みに入ってしまい、生活に困っても必要な制度を利用することが難しくなってしまいます。

それを受けて、毎年、例えば都内では、年末年始に生活困窮した人を支えるために、新宿・渋谷・池袋・山谷地域などの各地域で「越年・越冬」と呼ばれる、炊き出し(共同炊事)や夜回り、医療相談や生活相談などの、民間の支援団体による活動がおこなわれます。

しかし、2014年~2015年の年末年始は土日が重なり「閉庁期間」が、例年よりもはるかに長い9日間となりました。

これだけ長い期間、「閉庁」によって公的な支援が利用できない状況になってしまうと、それこそ路上で凍死される人や餓死される人がでてもおかしくありません。2013年~2014年の年末年始には、都内の各地の支援団体の協力で「ふとんで年越しプロジェクト」を結成し、約20名の方の支援をおこないました。もともとはその時限りのプロジェクトであった「ふとんで年越しプロジェクト」ですが、急きょメンバーが再度集まり、「ふとんで年越しプロジェクト2014(以下「ふとんP」)」をおこなうべく話し合いを進めました。

政府に「年末年始の生活困窮者施策についての要望」を提出

11月27日に、厚労省の担当者と「ふとんP」メンバーとで意見交換をおこないました。2013年次の第一回の要望と同様に、政府も何らかの対策が必要なことは認めつつも、「年越し派遣村」の時のような特別な対策をおこなうかどうかについては、それは難しいという回答でした。各自治体の動きもにぶく、結局、2014年~2015年の年末年始には、生活困窮者への生活保障や宿泊場所の確保などの特別な対策は、おこなわれませんでした。

行政機関がやらないなら自分たちでやるしかない、ということで、「ふとんP」では、山谷・新宿・渋谷・池袋のそれぞれの活動を後方支援するべく、昨年参加したメンバーを中心に、医師や看護師による医療相談チームとNPO等で生活相談に従事する生活相談チームとが一緒になって、一つのチームによる相談体制を整備し、必要な人が宿泊できるための個室シェルターを約30部屋分用意し、年末年始期間の約10日間、運営しました。

年末には渋谷の宮下公園で区による排除と公園の施錠がおこなわれるなど、路上を取り巻く厳しい情勢のなか、最終的には、約30人の方が「ふとんP」のシェルターに入所し、その後、各地で生活保護申請をしたり、各支援団体のシェルター等に移行したり、実際に就職に結びついたりと、それぞれのニーズに合わせたお手伝いをおこないました。

ふとんで年越しプロジェクト相談者の概況

※以下は個人情報等について本人に確認し了承をとれた方のみのデータをもとに作成しています。

ふとんで年越しプロジェクトのシェルターには約30人の方が入所されました。

性別は、男性が20名、女性が6名と、昨年と比べて女性の相談者が全体の23.1%と、かなり増加しました。

年代としては、34歳以下 5人、35~49歳 10人、50歳~64歳 5人、65歳以上 4人 と、若年層が多く、また、最高齢の方が76歳、最年少の方が25歳と、幅広い方にシェルターを提供しました。

平均年齢は47.7歳であり、昨年同様、比較的若く、いわゆる野宿者の平均年齢が59.3歳(平成24年度ホームレスの実態に関する全国調査)であることを考えると、住まいを失った生活困窮者の実情が国の定義の「ホームレス」だけでは不十分であることを如実にあらわしているといえるでしょう。

また、相談者の依頼先としては、池袋からが10名、山谷が3名、渋谷からは3名、新宿からは2名、よりそいホットラインの紹介が2名、その他県外からの依頼も含めて4名でした。

都内各地の「越年越冬活動」からそれぞれ依頼を受けたことや、県外の支援団体からの緊急依頼もよせられました。個室で医療的ニーズにも対応できるということで、各支援団体からの相談も相次ぎました。

相談者が貧困におちいった背景要因

ふとんPの相談者の状況としては、大きく分けて3つのグループに大別することができました。

A群は、高齢で病気を抱えている方。高血圧や糖尿病などの持病を抱えている方や、日常生活に支障のあるような症状の方もみられました。長く路上生活にとどまっていたり、生活保護を利用していたことはあるが劣悪な施設に滞在することが難しく、各地を転々としていたり、日雇労働などをしてきて高齢により仕事をすることができなくなってしまった方などが該当します。

B群は、主に中高年層にあたる人たち。この方たちは、多くは日雇い労働などで生計を立てていたが、年末年始に仕事が一時的になくなったり、体調を崩して急に生活に困ってしまった人たちです。実際に相談者のなかの27.9%は、年末に入るまでに日雇で何らかの仕事をしていた人たちでした。日雇の労働は不安定な労働であるだけではなく、住み込みであったりと、仕事と同時に住まいを失ってしまうことが多く、年末年始の休業にあわせて路頭に迷ってしまっていました。

C群は、若年層の人たちです。この方たちは、知的障がいや精神障がいを抱えている人が多く、実家にいたものの家族との関係が悪化して路上生活にいたってしまったり、精神科への入院や退院を繰り返すなかで帰る場所を失ってしまったりしている人たちです。彼ら・彼女らの多くは実際に障害手帳などを取得していたりと、一時は何らかの公的なサービスや福祉的なサポートを受けていたことがあるものの、家族との関係の悪化などの要因により、つながっていた公的支援が断絶してしまったり、望まぬ形での家族の援助から排斥されてしまったりして、住まいを失ってしまった人が多くみられました。

A~C群のすべてに言えることとしては、総じて体調が悪い方が多く、3人に1人が何らかの精神疾患をわずらい、4人に1人が知的障害の手帳を所持しており、身体的な症状をもってる方も3人に1人。そして、複数の症状、障害を持っている方が全体の24%を占めていることも明らかになり、このことからも、重篤な病気や障がいを持っている方が、結果的に路上生活にいたってしまっている実態が明らかになりました。

特に、障害手帳を所持している方が路上生活におちいっている状況というものは、非常に衝撃的でもあります。障害手帳を取得したということは、何らかの公的な支援を利用していたり、医療福祉的サポートを受けていたことを意味します。支援を受けていた人が、支援が断絶し路上にでてきている。もちろん、支援が断絶した理由にはさまざまなものがあり、本人に課題や原因があるものも含まれるでしょう。しかし、それを差し引いたとしても、そういった障がいや困難さを抱えて地域で暮らしていた人が、容易に路上生活におちいりやすい状況があるということ、また、そういった人たちが障がい等の理由によって、一人で制度にアクセスすることができずに路上にとどまってしまっている。路上生活者は国の統計では減っているといわれていますが、一人ひとりの路上に残されている人たちの状況は、より深刻化し、しかも、知的・精神障がいなど、見た目にわからない複雑さをともなっていると言えます。

政府や自治体に要望したいこと

ふとんPの相談後、多くの方は生活保護申請を希望され、実際に同行支援等でお手伝いをしました。また、都内の支援団体にアフターフォローをお願いし、民間のシェルターに入所することになった方もいらっしゃいます。

また、これまで日雇労働を続けてこられた方のなかには、年明け後の生活保護申請を希望されず、もとの職場に戻られたり、住み込みの仕事に新たに就職した方もいらっしゃいます。しかし、彼らのなかには、後日、再度の失職により路上生活に戻ってしまい、最終的には生活保護制度を利用することで生活の再建を目指すことになった人もいました。

そして、先述したような、知的障がいや精神障がいを抱えて、医療福祉的な支援を必要としている人たちは、多くは生活保護の申請にいたり、すぐさま入院した方もふくめ、公的な支援の利用につながったと言えましょう。しかし、この人たちのなかにも、後日、入所した公的な施設や宿泊場所の環境になじめずに失踪してしまった方もおり、より複雑な困難さを抱えた彼ら・彼女らを支える公的・民間の支援の力不足をあらためて実感しています。

ただ、一方で、ふとんPの活動により、さまざまな困難さをもった人に対応するためには、個室の緊急シェルターや、専門家チームによる医療福祉支援、住み込みでない就労支援のニーズなどの必要性が見えてきました。

私たちは、昨年同様、政府や自治体に対して、

  • 年末年始期間や、夜間休日などの閉庁期間中であっても、生活保護申請を受理し、公的機関の都合により制度利用の狭間がうまれないように、必要な生活保障を担保すること。
  • 就労中などの状況の人に対して、例えば週1回など夜21時までなどの、時間外の相談窓口を設置すること。
    住まいを失った人への個室シェルターや、早期のアパート入居への支援の整備をおこなうこと。
  • を求めていきます。

年末年始の「緊急事態」は無事に終わりましたが、路上をとりまく状況やニーズは、年間を通じて変わりません。今回、「ふとんP」の活動によって見えてきたものを分析し、国や自治体に対しても声を上げていきたいと思っています。