年間約4,000件以上の生活相談対応をおこなってる〈もやい〉は、主に4つの事業をおこなっています。これら事業を担うため、さまざまなバックグラウンドを持つスタッフが働いています。
その4事業の中でも「交流事業」では、〈もやい〉が連帯保証人を引き受けてアパートに入居された方が、入居後陥りがちな社会的孤立を解消するため、定期的な居場所・食事会や行楽などさまざまなイベントの開催などをおこなっています。
今回は交流事業「サロン・ド・カフェ こもれび」コーディネーターを務める松下千夏さんに、どういった経緯でNPOで働こうと決められたのか、お仕事の中でやりがいを感じる点などについてうかがいました!(聞き手:佐々木大志郎)

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── 松下さんはNPOにお勤めになられるまで、どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか?

私が社会に出たのが、バブル崩壊後のいわゆる超氷河期と呼ばれる頃でした。ですから、就職の際はそもそも選択肢が少なく、夢を託せるような状況ではありませんでした。
新卒として入ったのは当時間口が大きかった証券会社で、そこで三年間務めました。次に法人向けに海外赴任者向け研修をおこなう会社の営業として三年。そのあと、一番長く務めた独立系のIT会社で働き始めたんです。

その会社では素晴らしい先輩にも恵まれ、とても働きやすかったのですが、やがてリーマンショックがおこり、会社が不動産投資で失敗、負債を抱えて社員をリストラし始めました。
自分はその対象には選ばれなかったのですが、普通に働いていて、中には小さなお子さんもおられる同じ部署の同僚が、一・二ヶ月後にいなくなる。そういった場面に直面し「働き続けること」について改めて考えるようになりました。自分のキャリアや生活のためにだけ働く以外の選択肢があってもよいのではないかと考えはじめました。
それまで自分のキャリアの中で「NPO」という選択肢はなかったのですが、そんなふうに「誰かのために働けたらいいな」と思った折に初めてその選択肢があらわれたんです。

そうして最初は、児童養護施設の子どもたちをサポートするNPO法人「ブリッジフォースマイル」でボランティアを始めました。
児童養護施設出身者などの問題に関心があったのは、個人的な経験で、小さい頃から家庭環境が「複雑」な子とそうでない子の精神的な強さや、不安定さの違いを如実に感じる場面に遭遇し、共感していたからでした。
まもなく「ブリッジフォースマイル」でスタッフとして働きはじめ、その後、これまた同じ状況の子ども達が退所してからを支援している「アフターケア相談所ゆずりは」に転職しました。

── 「NPOで働く」という選択肢は、特に一般企業でのキャリアがある方は、まだまだ取りづらい状況ではないかと思います。その選択に迷いはなかったのでしょうか?

もともと経済的な面より精神的に満足できることを求めるタイプだったので、そのために転職もくり返すなど躊躇がないタイプです。
バブルとリーマンショックの影響を受けた立場としては、「これ以上、景気やお金に振り回されたくない」とは思います。

── 松下さんは〈もやい〉で働き始めてまもなく4年目ですが、こちらの求人に応じた動機と経緯はどんなものだったのでしょうか? 〈もやい〉が始めた一般公募初の採用だったとうかがっていますが。

「ブリッジフォースマイル」そしてその後務めた「アフターケア相談所ゆずりは」を通じて、児童養護施設出身などの「子どもの貧困」の問題に取り組んでいたのですが、そのうち活動の対象を子どもに限定していることに、自分の中で疑問が起きてきたんです。
いうまでもないことですが、子どもはすぐに大人になります。自分の課題として、「子どもの貧困」だけに留まらず、もっと広い範囲での「貧困問題」に関わっていきたいと考えました。

また、〈もやい〉創設メンバーのひとりである湯浅誠さんがTEDでおこなった講演をYouTubeで見て、とても共感したことも大きかったです。彼の経験から、「ホームレス」と十把一絡げに捉えず、ひとりひとり個人として名前を交わしていく。すると「人」としての顔が見えてきて、そのひとのために何が出来るかも見えてくる。そのようなことが具体的に分かりやすく訴えられていて「こういうことが大切なんだ」と再確認したんです。

── 現在携わっているお仕事の内容を教えてください。

「交流事業」担当コーディネーターとして、週一回の「サロン・ド・カフェ こもれび」、今年から隔週でスタートしたコーヒー焙煎と農作業、それらの調整や企画・運営をやっています。

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── 参加してくださっている方との関わりの中で、印象に残っているエピソードはありますか?

「サロン・ド・カフェ こもれび」の常連の方でAさん(仮名)という方がいらっしゃるのですが、来ていただいてもずっとひとり寡黙にすごされていて、人とコミュニケーションをとるのがあまりお好きではないのでないかと思っていたんですね。
ですが、今年スタートした「はたらく場作り」の一環である農作業やコーヒー焙煎にお誘いしたら、どれも皆勤で熱心に参加してくださるようになりましたし、こちらを皮切りに〈もやい〉の他のイベントにも顔を出してくださったり、サロンの他のお客様ともお話されるような変化がありました。
こんなふうに場面と時間を変えると、また違った関係性を結べるところがとても面白いなと感じています。

── 対人支援全般にいえることですが、特にアパート入居後の息の長い関わりを前提とした交流事業は、当事者の方へ強いコミットが必要な場面もあり、ある部分で職業的な対応を越え人格的に引き受けなければならない部分もあるのではないかと考えます。松下さんはこの仕事のどの部分で、特にモチベーションを感じていらっしゃいますか?

サロンという場を作っていく上で、私は自分がその輪に入り中心になって何かをするよりも、当事者の方やボランティアの方が私のいないところで楽しくお話したり、何かをしていたりするのを見るのが嬉しいんです。
逆に「あなたがいるからここに来ている」といわれると、ありがたい反面プレッシャーを感じてしまいます。ですから、自分が直接求められるのではなく、その場と機会を提供できたことの達成感が、一番のモチベーションです。
みなさんがゆっくり楽しんでいるまわりで、自分はその光景を眺めているのが好きです(笑)

── サロンや「はたらく場」にはさまざまな方がいらしていますが、来てくださっている方の傾向として感じることはありますか?

路上生活も含めた生活困窮の経験がある方のなかでも、世代間の意識の差は感じます。
60代~70代の方は、かつては路上状態で生き抜いていらっしゃった方も比較的多く、特にサロン常連の方は社会性の高さに驚かされます。
一方で、若い世代で困窮経験がある方は、ある種の難しさがあるかと思います。よい悪いは別として、いわゆる「支援慣れ」されてる方も多いです。

── 2017年12月より〈もやい〉では入居支援事業の求人を開始しています。入り口としての「生活相談・支援事業」を入り口として、「入居支援事業」でアパートへ繋ぎ、「交流事業」で息の長いつながりを作るため、一緒に動くことも多いと思います。まだ見ぬメンバーに向けてメッセージをお願いします。

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2018.01.05

さまざまな方が相談にこられ、それぞれにご事情があり、日々新しいことが起こり続けています。結局は取り組んでみなければわからないことだらけの仕事なので、きっとずっと考えたり悩んだりしながら関わっていくことになると思います。実際、自分もそうです。
それでも、もちろんひとりではありませんし、新しいチャレンジが自分自身の新たな面を知る機会になるかもしれません。
あまり深く考えすぎず、ちょっとでも興味があれば飛び込んできてほしいと思います。

── ありがとうございました!

冬のご寄附のお願い

生活にお困りになり〈もやい〉ご相談にこられる方々。その中でも、現在お仕事をされているにも関わらず困窮される方も増え続けています。 年明け後も相談活動を続け、貧困問題に立ち向かう〈もやい〉を、寄附という形で応援していただけませんか?