昨年末に和光鶴川小学校にて行われました出張サロンについて、
主催していただいた会のニュースレターをいただきましたので掲載いたします。

ニュースレターは、
「お母さん、ホームレスって、どんな人?」と
「お母さん、ホームレスって、どんな人?」<続編>
のふたつがあります。

「お母さん、ホームレスって、どんな人?」は、
和光鶴川小学校の親子が最初に<もやい>のサロンに来店されてから
出張サロンの企画をするに至るまでのお話です。

「お母さん、ホームレスって、どんな人?」<続編>は、
出張サロンの当日の様子といただいた感想などについてのお話です。

とても読みやすい文体でありながら、内容的にも学びが多く、読みがいのある文章になっております。
<もやい>と出会ってくださった方にこのような素晴らしい機会をいただき、
出会いの場を持てたことは本当に得難い、ありがたいことでした。
本当にあたたかい会で、一緒に行ったメンバーもとても充実した様子でした。
今後とも様々な形でこうした出会いの場をつくっていければいいなあ、とみんなで考えております。

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「お母さん、ホームレスって、どんな人?」

ニュースレターの挿絵に使われているイラストはサロンに来店されたお子さんが書いてくれたもの

スーパーの袋を両手にいくつも提げて教室を移動している子に、「あ、ホームレスだ〜!」とまわりの子が笑ってからかうという出来事が、子どもたちの間であったそうです。
からかった子たちはそばで聞いていた先生から叱られたそうですが、おそらく、子どもたちには、特に悪気もなかった。
ただよく知らなくて、何となく、否定的なイメージだけがあったのでしょう。
そしてそれは、親である私たちも同じではないでしょうか?
「お母さん、ホームレスって、どんな人なの?」
その日子どもに質問されて、私はうまく答えることができませんでした。路上で生活している人たちを、もちろん見かけたことはあります。でも、その人たちがどんな人たちかを、ほんとうに知っているわけではありません。
かわいそうな人? 不潔な人? 怖い人? 努力が足りなくて、さぼっている人? そして、私たちとは、全然関係ないような人? 考えてみても、よくわかりません。
そこで、ある土曜日、地下鉄江戸川橋駅近くのある場所に、子どもと一緒に行ってみることにしました。ホームレスの人たちの自立を支援している<もやい>という団体が、週末に運営しているカフェ、という情報だけで、あとは何にもわからないまま行きました。
そこは、多勢の人で賑わっていました。何だかみんなが知り合いのような感じで、私たち親子にとっては相当アウェーな感じ……。まわりからの視線にドギマギしながら、メニューを見て、三色丼のランチとコーヒー、自家製梅ジュースを注文しました。
子どもが小声で伝えてきた最初の印象は、「おじいさんがいっぱいだね……。なんか、カフェって感じじゃないよ……?」
その日はカフェに行く、と言って子どもを連れ出したので、(お母さん、騙しやがったな!)と口にはせずとも激しくにらまれているのを感じながら、ランチをいただくことになりました。
「……おいしいよ!」食べはじめると、子どもの表情が急に変わりました。三色丼の鶏そぼろは生姜が効いていて、炒りたまごはふわふわ、さやえんどうはシャキシャキのちょうど良い茹で加減で、梅ジュースは手作りの優しい味。派手さはないけれど、丁寧に、心をこめて作ってくださっているのが伝わってくる味でした。
「今日は、初めていらっしゃったんですか?」若いスタッフの方がおひとり、私たちのテーブルに来て、にこやかに話しかけてくれました。それに勇気を得て、子どもにホームレスの人について質問されたけれども、よくわからなくて、今日は教えてもらいたいと思って来た、ということを正直に伝えました。内心、こういうのは失礼かなあと心配だったのですが、「よく来てくださいましたね」と言ってくださり、「後で詳しいスタッフを連れてきます」、と私たちが食事を終えるのを待って、年配の男性スタッフを連れてきてくれました。
Kさんというその方は70代くらいの、さわやかで知的な男性で、<もやい>の活動について、ホームレス状態にある人たちのことについて、わかりやすく、いろんな話をしてくださいました。子どもと一緒にたくさん話を聞いて、最後に、「Kさんは、どうしてこういう活動に興味を持たれたんですか?」と聞いてみました。
「実は私も、かつてホームレスだったんですよ……」
「ええっ?!」子どもが思わず声をあげました。(だって、普通の、おしゃれなおじさんじゃない?!)
子どもの心の声が聞こえました。私も心の中では、同じ声をあげていました。
Kさんは、金融関係の会社で管理職をしていた、普通のサラリーマンだったそうです。結婚もしていて、子どももいました。それが、さまざまな事情が重なって、家族と別れ、会社を辞め、それでも若いころは何とかなったけれど、年をとるにつれて仕事がなくなり、家賃が払えなくなって、住むところもなくなり、しばらくはビジネスホテルなどで寝泊まりしていましたが、最終的にはそのお金もなくなって、ホームレスにならざるを得ない状態になったそうです。
そして、ホームレス状態でいるところを、<もやい>を作った人たちに助けられたこと、だから今度は自分も助ける側に回ろうと思ったこと、などを話してくれました。
食後においしいコーヒーを淹れてくださった Oさんは、やはり70代で、優しい笑顔の素敵な、穏やかな方でした。口数は少ないけれど、混み合ったカフェの中で、誰よりも真面目に誠実に仕事をされているご様子が、見ていて伝わってきました。その後<もやい>に時々遊びに行くようになってわかったのですが、Oさんは、お料理もすごく上手です。<もやい>の活動がある日には、誰よりも早く、朝5時くらいに来て、スタッフのために何種類もの、心のこもったお料理を用意してくれます。でも、まさか、Oさんも、元ホームレスだったんですか……?
Oさんに直接うかがうことは憚られて、他のスタッフにこっそり聞いたら、その人は黙ってうなずきました。
これらのことを、どのように捉えたらよいのか、私も、子どもも、まだよくわかりません。ただ、ものすごくショックで、できるだけたくさんの方に、このことを伝えたいと思いました。でも、どうしたらよいかもわからなかったのですが、<もやい>の方々に話すと、協力する、一緒にやってみよう、と言ってくださいました。そして、無償ではるばる鶴川まで、来てくださることになりました。
「もうぼくたちは知り合いになれたから、ホームレスっていうだけで、石を投げつけようと思う子には、あなたは絶対ならないよね。それが、ぼくたちの第一歩」とKさんが子どもに言いました。
私たち大人も、小さな一歩を、一緒に、いかがですか?
(2017年 11月 和光鶴川小学校 くらしとれきしを考える会)

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「お母さん、ホームレスって、どんな人?」 <続編>

出張「サロン・ド・カフェ・こもれび」。ホームレス状態の方の自立を支援するNPO法人、〈もやい〉のスタッフをお招きしての「おいしいコーヒーの淹れ方講座」は、おかげさまで多くの方にご参加いただき、実り多い会となりました。
参加者は鶴小だけでなく、鶴幼、世田谷和光小、和光中、和光高からも、そして卒業生のお母さんも来てくださり、32名となりました。当日は都合で参加できなかったけれど、どんな会だったのか教えてほしいという声も、多く寄せられました。ここに感謝をこめて、ご報告いたします。

地下鉄江戸川橋駅近くにある〈もやい〉事務所で、毎週土曜日に開かれている「サロン・ド・カフェ こもれび」は、もともと、同じ新宿区の「こもれび荘」と名付けられた一軒家で、さまざまな人たちの居場所作りとして、はじまったカフェです。このカフェが生まれた経緯、元ホームレスの方たちの自立支援としてのコーヒー焙煎については、元〈もやい〉スタッフが書いた優れた本が出版されていますので、興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください*1
今回はそのカフェの初の出張版として、〈もやい〉から5人のスタッフが来てくださいました。
コーディネーターは、松下さんと田中さん。
松下さんは元はIT関係のキャリアウーマンで、今回の企画をまとめるにあたっても、その敏腕ぶりを発揮してくださいました。全体を見通し、まとめる力の高い彼女の存在なしでは、この企画の実現は難しかったと思えるほど、頼りになる方です。
「コーヒー王子」 田中さんは、コーヒーが大好きな、26歳。〈もやい〉スタッフの中でも若手の彼は、大学時代に元SEALDsの奥田愛基さんと知り合い、彼の実家にホームステイしたことがきっかけで、ホームレス支援に興味を持つようになったそうです。今回は運転手役も買って出てくださり、ご自身の車に重いコーヒー焙煎機を積んで、他のスタッフと共に江戸川橋から鶴川までを往復してくださいました。
そして、かつて路上生活を経験され、今は〈もやい〉でスタッフとして働いておられるKさん、Oさん、Gさん。KさんとOさんは、以前配布しましたご案内の裏に、書かせていただいた方々です。今回そのご縁で、Gさんもご一緒に、はるばる鶴小まで来てくださることになりました。
Kさんは、私と子どもが初めて〈もやい〉事務所を訪れたとき、いちばん最初に出会った「元ホームレス」の方で、(この方が、元ホームレス?!) と子どもと共にすごく驚きました。金融関係の会社で管理職を務められていたこともあったKさんは、鋭い洞察力をお持ちで、お話も知的で面白いです。
Oさんは、ニックネームが「パパさん」。まさに「パパさん」という感じの、穏やかであたたかいお人柄です。お料理がとても上手で、〈もやい〉事務所に企画の打ち合わせに行くたびに、手作りのお昼ごはんをごちそうになりました。大きなテーブルをみんなで囲んで、心をこめて作ってくださったお料理を、おいしいね、おいしいね、といただいていると、知らない人ともつながれるような、あたたかい気持ちになりました。
〈もやい〉のスタッフを鶴小にお招きするときには、こちらでも、ささやかでも、心のこもったお料理を用意して、みんなで食べたい。今回、コーヒーだけでなく、食事とデザートもお出しすることにしたのは、パパさんのお料理の影響です。鶴小母たちで、前日から、大量のカレーの仕込みをしました。どなたも食べやすいように辛味を抑え、クローブ、シナモン、カルダモン、フェヌグリークなどのスパイスを用いたスパイスチキンカレーは、参加者のみなさんにも、〈もやい〉スタッフにも大好評で、レシピを教えてほしいという声も多かったです。*2
Gさんは、〈もやい〉のコーヒー事業に立ち上げから関わっている方で、コーヒーへの造詣が非常に深く、コーヒーの専門家、といっていいと思います。背が高く、大柄でいらっしゃるので、一見怖そう?にも見えるのですが、実際にはとても優しい方で、鶴小の調理室で、お母さんたちに向けて、無償でコーヒー講座をやってもらいたい……という厚かましいお願いにも、「いいですよ」と二つ返事で引き受けてくださいました。

挿絵、ハンコも手作りでいい味出てます

会は、おいしいカレーをみんなで食べながらはじまりました。〈もやい〉スタッフの紹介の後、参加者と、スタッフの方とで自由に歓談しました。ここでは社交的なKさんが、お母さんたちの輪に積極的に入ってくださり、質問に答えながら、ご自身の経験から、いろんな話をしてくださいました。
カレーを食べ終えてからは、Gさんが、持参の焙煎機でコーヒー豆を焙煎しながら、コーヒー豆の話、フェアトレードの話、自立支援としてのコーヒー焙煎の話、などを、みんなにわかりやすく話してくださいました。
シャイで控えめな、パパさんことOさんは、コーディネーターの田中さんや参加者の質問に答えるかたちで、ご自身のことを話してくださいました。今年80歳になられたOさんは、10代のときに、東北から集団就職で東京へ来られたそうです。何度か職は変わったものの、最後はひとつの会社で30年近く勤められたそうですが、当時の定年で55歳になるとそれまで住んでいた寮を出なくてはならず、住むところと職を一度に失って、退職金だけでは立ちゆかなくなり、手続きをして年金がもらえるようになるまでの5、6年を、ホームレスとして過ごされたそうです。夜はとにかくひたすら歩き続けて、昼間に図書館やベンチで寝ていた、と淡々と話されました。参加者から次々と出るさまざまな質問にも、嫌な顔ひとつせず、心よく答えてくださいました。ご自身がお辛かった話はほとんどされず、いろんな人に親切にしてもらったから今がある、と話してくださいました。

そのあとは、〈もやい〉スタッフが淹れてくれた自家焙煎の香り高いコーヒーと、鶴小母の手作りかぼちゃプリンをいただきながら、参加者とスタッフが、自由に移動しながら話をしました。Kさんやパパさんと個人的に話をされる方や、Gさんや「コーヒー王子」田中さんに、コーヒーの淹れ方のコツを教わる方など、みんなで思い思いに過ごしました。

参加してくださったみなさんの、わかろう、つながろう、という想いと、〈もやい〉のスタッフの方々の、それを受け入れ、応えてくださろうとする想い、それらが合わさって、あたたかな気持ちが会全体にずっと満ちているような、豊かな時間になりました。
〈もやい〉スタッフからは、「感性の豊かなお母さんたちに、きちんと受け止めてもらっているのを感じたから、安心して話せた」という言葉がありました。
参加してくださったみなさんから、たくさんいただいた感想の中から、一部分ですが、ご紹介いたします。

⚫︎皆さんの飾り気ない、誠実な雰囲気に触れて、色々考えさせられました。一気に、たくさんのことはできないけれど、出会ったできることから、小さくても大事に動く、ということが大事なのかな、と思いました。パパさんの、コーヒーを丁寧に淹れる姿を見習って、生活しようと思います。

⚫︎「元路上生活者」の方とお話ししたのは、初めてでした。「失礼かな?」「でも知りたいな」と思うようなことも何でもお話しくださって、いろんな発見がありました。「路上生活者」といっても色々な人たちがいて、支援の仕方もいろんなかたちがあると知りました。

⚫︎わたしの知らない世界に出会うことができました。貧困問題、知っているという「知識」を、自分の生活時間の中に、つなげる機会がありませんでした。今日、Kさんと対面で色々お話しして、社会を見つめる知的なお話に、深く学ぶことがありました。路上を歩き、ホームレスの人に声をかけていく活動など、真の支援という視点がないと、到底できることではないだろうと思うと、現実の中で耕されている知性について、考えるものがあります。学ぶことは、社会や人との関係を、豊かに幸せに向かうものでありたいと思い、また願います。

⚫ご自身のお話、きっと話したくないであろうことも含め、真摯に話してくださりありがとうございました。いつ自分がそうなってもおかしくない現状の社会制度、今まで以上に社会問題に目を向けていきたいと思いました。

⚫︎皆さんのお話がとても興味深く、つい引き込まれました。「路上生活」が何か特別な遠いところで起こっていることではなく、みなさんそれぞれの事情で路上に暮らされている、ということがわかりました。「誰にでも起こりうること」という言葉が印象的でした。そして路上生活から一歩先へ進むための「自立支援」を充実させることが、とても重要だと痛感しました。

⚫︎〈もやい〉スタッフの方々、みなさん笑顔がステキでした。もっとたくさんの笑顔が増えていくといいなと思いました。私も、自分ができることで、お手伝いできることを見つけて、活動できるようになりたいと思います。

⚫︎〈もやい〉スタッフに、参加者が次々と質問していて、もっともっと知りたい!という熱がすごかったな!という印象です。
政治や世の中がだいぶ歪んでいるように感じるこの頃ですが、実はその逆の、人本来の原点に戻ろうとするエネルギーも生まれているのかな、と希望を見たような一日でした。

⚫︎日常生活において、自分からはなかなか交流する機会が今までは持てなかったので、機会を与えてくださり感謝です。世の中のいろいろなことを、まずは知ること、何事もフラットに物事を見ることから、「平和」な世の中につながるのかな、と思います。

⚫︎「ホームレス」である人たちへの偏見が、(自分の中に)実はあった!ということも自覚し、でも何より、そういう人たちがその状況に陥ってしまった社会問題も知ることができたことがとてもよかったです。何より、みなさんの人柄がとっても素敵で、私自身、新宿、渋谷などで仕事をしていたので、ホームレスの方々を目にする機会は多かったのですが、今日のお話を聞いていたら、きっとその方たちに対する感情も違っていたと思います。知らないということは、恐ろしいな、と感じました。誰かを支援するということに(個人レベルでは)限界がありますが、知る、ということも支援の形としてとっても大切だな、と実感した会でした。

参加してくださったみなさん、興味を持ってくださったみなさん、本当にありがとうございました。
私たちのこの小さな一歩が、いろんなかたちで多くの方とつながって、これからも、ささやかでも、続いてゆきますように。
(2017年 12月 和光鶴川小学校 くらしとれきしを考える会)

*1 『つながりゆるりと〜小さな居場所「サロン・ド・カフェ・こもれび」の挑戦』
うてつ あきこ著(自然食通信社)

*2 今回のご縁で、〈もやい〉事務所での「サロン・ド・カフェ・こもれび」で、有志の母たちが時々カレー作りをすることになりました。

もやいへのご支援のお願い

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ABOUTこの記事をかいた人

サロン・ド・カフェ こもれび

誰でも立ち寄れる交流サロンです。月3回程度、もやい結びの会のメンバーやボランティアスタッフが中心になって、週替わりランチ・おやつ、飲み物を提供し、社会的に孤立した状態の方々が、人間関係の回復を図る居場所として運営します。また貧困問題や居場所に関心のある方々などの、ゆるやかな交流の場を提供します。