4月21日(日)、〈もやい〉では初めてとなる日曜日の臨時相談会を行いました。
これは、最大10連休となるゴールデンウィーク中に困窮状態に至る可能性のある方、
働いているなどして火曜日の相談に来られない方を主な対象としたもので、
当日の様子はNHKのニュース7で放送されました。

〈もやい〉ではこれに先立って、厚生労働省に対して
連休中の生活困窮者への対応を確認し改善するよう要望書を提出し、
4月19日付で関連する通知も出されています。
このページでは相談から得られた知見などをご紹介したいと思います。
(個人情報を保護するため、匿名化した上、一部の情報を編集しています)

不安定就労と住まいの喪失

「ネットカフェ難民」や「ワーキングプア」という言葉が
人口に膾炙するようになって10年以上が経ちました。
もちろん今でもネットカフェや会社の寮に寝泊まりして働き、
ギリギリの生活をされている人がいます。
そしてこのような状況にいる方にとって、
長期休暇は仕事と住まいを同時に失う危険をもたらします。

〈もやい〉に相談に来られたXさんも、
関東を中心に寮付きの派遣の仕事を転々としていましたが、
契約が更新されずに寮を出され、ネットカフェに滞在していました。
しかし、長期休暇中やその直前になると採用活動自体が行われなくなり、
もともとサービス業をしていたわけでもないため、
仕事を見つけられず困窮状態に陥ってしまいました。

厚生労働省や東京都によるいわゆる「ネットカフェ難民」調査では、
調査時点ではネットカフェに滞在している人でも、
ファーストフード店や路上などで夜を過ごすこともあることが指摘されていました。
Xさんもまた、ここで〈もやい〉につながり生活保護制度を利用できなければ、
おそらく路上生活を強いられていたことでしょう。
このことは、「ネットカフェ難民」の実態、
そして会社の寮、路上、ネットカフェとの関係を考えるうえで
季節性などの側面を勘定に入れる必要があることを示しているように思われます。

ひきこもり状態と長期休暇

臨時相談会には、ひきこもり状態の方も複数名来られていました。
その中でも、Yさんは家族との折り合いが悪くなり住み込みの仕事を始めたものの、
長く続かず一時的にホテル生活をしている状態で〈もやい〉につながりました。
Yさんはある程度のお金を持っていたために、ホテル等に滞在しつつ仕事を探して、
親元からの自立を計画していました。
しかし、連休のために手頃な値段のホテル等は旅行客などで埋まっていき、
住むところを失う危機に面することになります。

ひきこもり状態を脱却するべく家を出たものの、
長期休暇に当たってしまったために、仮の住まいさえ失ってしまうYさんの事例は、
これまであまり「貧困」の文脈では取り上げられてこなかったものだと思います。
しかし、ひきこもり状態にいる方の人数が増え、また高齢化する中で
こうした事例は今後増えていく可能性があり、Yさん個人の問題ではなく、
行政や、広く社会が対応していく必要があります。

今後について

XさんやYさんのような事例が示しているように、
長期休暇はギリギリの生活をしている人々にとって
必ずしも歓迎すべきものではありません。
余裕のある人にとっては楽しい長期休暇かもしれません
(そしてそれ自体は悪いことではありません)が、
その陰にはサービス業で働く人々、その仕事に就くことも難しく困窮する人々がいます。

1990年代に「ホームレス問題」として貧困に焦点があてられた時、
それはとても見えやすい貧困の話でした。
その後、ネットカフェ難民やワーキングプアといった
見えにくい貧困が論じられるようになり、
現在では子どもの貧困、女性の貧困、高齢者の貧困といった
多様なトピックが語られています。
こうなってくると、当然それぞれの状況に置かれている人々が経験する固有の問題に
焦点が当てられてくるようになると思います。
これは決して悪いことではありませんが、
一方で様々な形での生活困窮の背景にあるものを
考えていくことを忘れてはいけないと思います。
例えば安定した仕事に就く機会がすべての人に対して
開かれていないという問題はこれまでにも指摘されてきた通りです。

ひきこもり状態にいる人や障がいのある人を念頭に置けば、
この社会における就労のあり方や生計を成り立たせるための方法そのものも
問い直していくことが必要になるかもしれません。
全国一斉の長期休暇という仕組みも、様々な状況に置かれている人に
いろいろな形で悪影響を与えていることが今回示唆されました。
たかがゴールデンウィークと考える人もいるかもしれませんが、そのように思えない人がいる、
その仕組みによって困る人がいるということは小さいようで大きなことではないでしょうか。
このことを多くの人に伝えることができればと考えています。

そして何より、現に困窮をする方がいる以上、
それに対して行政は万全の対応ができるように
体制を整えていく必要があると思います。

〈もやい〉は、これらの発見を踏まえて、行政に働きかけて
少しでも状況を改善させることを求めてまいります。(結城)

「これだけは知っておきたい!
貧困問題 基礎講座 2019」

〈もやい〉では2014年度より、毎年貧困問題について学ぶことのできる有料講座を開催してまいりました。
今年度の貧困問題基礎講座は「家族・暴力・貧困」をテーマに、
研究者や現場での支援に携わっている方々にゲスト講師としてお越しいただきます。
【講座概要】
内 容:日本の貧困問題の概要、貧困と虐待、依存症、暴力
日 時:2019年9月14日(土)、2019年9月15日(日)いずれも10時~17時
場 所:パルシステム東京(東新宿)
http://www.palsystem-tokyo.coop/map/shinjuku_new.html
受講料:一般 10000円、学生 8000円
定 員:50名
ゲスト講師(予定):
山下敏雅さん(弁護士)、和久井みちるさん(元生活保護利用者)、横田敏さん(生活保護ケースワーカー)
申込受付:7月から受付開始予定(詳細はお問い合わせください)

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