認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2025.12.12

もやい川柳 結果発表!!

おもやい通信夏号で「もやい川柳」を募集したところ、
26名から59句の川柳をお送りいただきました。
今号では、その結果を発表します!

7月23日午後、小説家の星野智幸さん、理事長の大西さん、
私(加藤)の3人で、厳正なる選考を行いました。

左から星野さん、事務局長加藤、理事長大西

◉ 大賞

 おムツして 野糞にしゃがむ 老い散歩

                                                    (東京都/瀧あすかさん)

◉ もやい賞

 さまざまな 思いは束ねず もやいかな

(東京都/長楽喜四号さん)

◉ 星野智幸賞

 みずのほし うそとまことの つなわたり

(地域不明/うさぎさん)

◉ 理事長賞

 今日も又 あの人来てる ホットする

(埼玉県/遠藤延幸さん)

◉ 事務局長賞

 つながりを えらぶじゆうに なをしばる

(地域不明/ねこぽんさん)

◉ ラップ賞♪

 都知事様 5分でよいので 見に来てよ

 プロジェクション 庶民の生活 写してよ

 待つ列は 老若男女 全世代 

 村八分 今だに残る  「保護」は恥

 姿では わからぬうつの 失業は

 保護制度 伝えて欲しい 広報で

 保護制度 教えて欲しい 授業でも     

                                                 (埼玉県/玉田厚さん)

 総評   

いやあ、むちゃくちゃ楽しい選考会でした。
採れたての川柳、鮮度が高くてとっても美味しかったです。

〈もやい〉への思いを歌ったもの、時事的社会的なテーマに感情を乗せたもの、
そして日常の身辺雑記を切実に面白おかしく活写したもの。
上手い下手関係なく、言葉にするっていいなあと、改めて思いました。

これだけ熱い作品をたくさん送ってくださったので、
一つひとつを読んでいくのに、私たちも力が入りました。
深読みしたり、背景を勝手に想像したり、どんな心境で書いたのか空想してみたり。
こういうおしゃべりが、作品を豊かにするし、読むほうも楽しくなるのです。
例えば、玉田さんの作った七句は、それぞれ独立した作品としてではなく、
合わせて一つの詩として見たほうがリズムがあって面白いということに気づきました。
大西さんがラップにして読んでみたところ、ドンピシャ!
詳しくは大西さんの解説をご覧ください。  

選考方法はこうです。
まず、すべての川柳について一つずつ俎上に載せ、感想を言い合いました。
そのうえで、一次選考として、複数投稿されている方の作品を
一番気になるもの一つに絞ります。
書き手一人につき、一句ずつ残すわけです。
二次選考として、その中から各選考委員が自分の好きな句を五つ選びます。
そこに挙がった句から、最終選考で大賞及び各賞を選んでいく、
という手順を取りました。(星野)

 選評

大賞

 みごと大賞に輝いた句は、瀧あすかさんの
「おムツして  野糞にしゃがむ 老い散歩」。
一読、強烈すぎて忘れられなくなりました。
粗相をしないよう紙オムツを付けて外を歩いていて、
もよおしてきて、オムツしたことを忘れてついしゃがんでしまう。
恐ろしいまでの冷徹なリアリズムであると同時に、
「おムツ」「野糞」というまばゆい言葉の選び方が、
切実さ深刻さを噴き飛ばすほどのユーモアを放っていて、
圧倒されました。
使い方を間違えれば下品にもなりかねない言葉を、
精緻で笑いを与える表現に変えてしまったこの句、
文句なく満場一致での大賞でした。

表現にタブーはありません。
自分にとって切実ならば、何をどう書いても自由です。
ただ、他人を傷つけるような暴力として言葉を使うのは、表現以前のルール違反です。
この句は表現の自由を最大限に使っていて、素晴らしいです。(星野)

もやい賞

長楽喜四号さんの「さまざまな  思いは束ねず  もやいかな」は、
〈もやい〉の個性的な面々によるごった煮の人間模様と、
にもかかわらずともに活動していることに心地よさを感じられる
〈もやい〉の雰囲気を、よく表していると思います。
〈もやい〉で活動している人々、〈もやい〉に相談に来る人々、ほんとうに「さまざま」です。
「多様性」と言ってしまうとシンプルすぎますが、
人は一人ひとり違うことを前提に、その違う人間同士がときにはぶつかり合いながらも、
貧困のない社会を目指して活動している、それが〈もやい〉だと思います。

〈もやい〉を表現した句はたくさんありましたが、この句がもっとも秀逸でした。(加藤)

星野智幸賞

私が「星野智幸賞」として選んだのは、うさぎさんの
「みずのほし  うそとまことの  つなわたり」。
政治の世界がどんどん、嘘をついた者勝ちの度合いを深めていますが、
一方で事実やルールに基づく民主主義、法治主義も、必死で押し返そうとしています。
私たちの生活は、その危ういバランスの上に成り立っていることを、
こんなにシンプルで優しい言葉で表していることに感銘を受けました。
しかも、それは世界的な現実。
つまり、地球上の人間と動植物が、その微妙なつりあいの上で生きているのです。
それを「みずのほし」という柔らかい一言で包み込む。
世のせちがらさを言葉遣いだけでなだめてくれる詩だと思います。 (星野)

理事長賞

理事長賞として選んだのは、遠藤延幸さんの
「今日も又 あの人来てる ホットする」です。
今回、投句の方法としてハガキやメールはもちろんですが、
事務所にも投句箱を設けておりまして、
サロンなど交流事業に参加してくれている方も多く応募してくれました。

この句はまさに〈もやい〉のサロンを象徴するような句です。
句のなかの「あの人」は仲良しの人かもしれないし、
話したことがないけど顔を見たことがある人かもしれない。
何ならあんまり好きじゃない人だったりするかも。
でも、そんな「あの人」が今日も来ていると「ホットする」。
逆に姿が見えないと大丈夫かなと心配になる。
そんなゆるやかでしなやかな〈もやい〉の雰囲気を表してくれていますし、
この雰囲気を守っていきたいなと思いました。(大西)

事務局長賞

ねこぽんさんの「つながりを えらぶじゆうに なをしばる 」は、
作者がほんとうのところ何を表現しようとしたのか、
選者のあいだでも判然としませんでした。
私は、「えらぶじゆう」という言葉に惹かれました。

〈もやい〉の団体名にも入っている「自立生活」に
大切なもののひとつが「選択する自由、選択する権利」だと思います。

私の想像では、この句は扶養照会について表現している、
あるいは選択的夫婦別姓について表現している、
(そしてどちらの場合でも怒っている)と考えました。
どの親族とつながっていたいか、いたくないか、どの姓を自分のものとしたいか、
それを「えらぶじゆう」は私たち一人ひとりにあります。
そして、自分の人生を自分で選びとっていくためにも、
貧困のない社会が必要だと改めて思いました。(加藤)

ラップ賞♪

1人3句までのルールにも関わらず7句も送ってくれた玉田さん。
最初は1句ごとにみていたのですが、ちょっと俯瞰してみるとあら不思議。
あふれでるグルーブ感!
韻も踏んでいるし、起承転結もあり、玉田さんからのあふれでるメッセージ。
もうこれはラップ賞! にしちゃいましょう!  (大西)

大好評の「もやい川柳」、今後も1年に1回開催したいと考えています。
来年に向けて、ぜひ今から作りためておいてくださいね!(加藤)

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