認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

メニュー閉じる
閉じる

もやいブログ

2025.12.10

おもやいオンライン広報・啓発事業

生活困窮者の猛暑災害の対応に関する調査の報告

近年の酷暑によって日々の生活にも問題が生じています。
こうした問題意識のもと実態調査を立教大学の後藤さんが立ち上げ、
本調査で〈もやい〉は協力団体として参加しました。
今号では調査で明らかになったことを示していただきました。
調査にご協力いただいた方はありがとうございました!

猛暑と生活困窮者

2024年の夏は、記録的な猛暑が日本を襲いました。
ホームレス状態にある人や生活困窮者にとって、暑さは命に関わる深刻な問題ですが、
その実態については明らかになっていません。

そこで、〈もやい〉をふくむ東京都内の支援団体の協力を得て、
炊き出しや相談支援の場で418名に対して実態調査を行いました。
回答者の主な寝場所は右図の通りです。

ここでは、割合の高い、「路上」と「アパート(エアコンあり)」の人々を取り上げ、
猛暑下での具体的な困難、どのように対処しているのか、
どのような要望があるのかをご紹介します。

路上生活者の人たち—限られた選択肢の中で

路上で生活する人たちは、日中は「水辺や木陰」で涼む(27.6%)
「図書館などの公共施設」を利用する(20.1%)といった対応をしていました。
しかし、夜間は「特に対応をしていない」が55.3 %と最多で、
暑さに耐えながら寝るしかない状況であることがわかりました。

困りごとの中でも目立ったのは「寝られない」という声。
また、蚊や虫の被害、食料が腐る、炊き出しに行くのが大変、
という切実な声も多く聞かれました。
特に、炊き出しが唯一の食料支援となっている人も多いため、
食料が確保できない、腐ってしまうという問題は深刻でした。

さらに、「暑さで心が荒む」「落ち込む」といった
心身の不調を訴える人も少なくありませんでした。
一部の人は、涼を求めて図書館や商業施設に入ろうとしますが、
約13.6%が「退去を促された」経験があり、
安心して休める場所がないという現状も浮かび上がりました。

アパート暮らしの人たち —光熱費の壁と仕事の減少

エアコンが設置されたアパートで暮らす人たちは、
日中・夜間ともに「エアコン」を使うことで暑さをしのぐ人が多かったものの、
約半数(48.7%)が「光熱費を節約するために冷房の使用を控えた」と回答しています。

実際、夏になってからの電気代は71.3%の人が「上がった」と答え、
平均で3479円、中央値でも3000円もの増加が報告されました。
これは生活保護や低収入で暮らす人々にとっては大きな負担です。
また、「暑さでバイトが減った」「仕事がなくなった」という声も目立ちました。
熱中症対策として公共事業が休止され、働く機会そのものが減ってしまった人もいます。
「汗をかいて人に会うのが嫌だ」「水分が十分にとれない」「夜、寝苦しい」といった声もあり、
アパート暮らしでも安心できる状況とは言えません。

必要とされる支援

調査では、「冷たい飲み物や食料の支援」「休める場所」
「冷房費の支援」などが求められていましたが、
最も多かったのは「何を言っても無駄」という諦めの声でした。
暑さの中、居場所によって異なる苦労や工夫がありましたが、共通して
「命にかかわる危険」が身近にあることが浮き彫りになった調査結果です。

路上生活者が利用しやすいクーリングシェルターの設置や、
生活保護の夏季加算の創設などが対策として必要であると思われます。

立教大学/ NPO山友会理事
後藤広史

最新の記事を読む

一覧を見る