認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2022.1.19

入居支援事業おもやいオンライン

アフターコロナの住まい探し 〜〈もやい〉は何を担えるか〜

 住まい結び事業開始から3年半。
300名超の相談対応、100件弱の入居仲介という実績を重ねてきましたが、ご多聞に漏れず“コロナ禍”の下で大きく影響を受けています。アフターコロナにおけるこの事業が担うべき役割についてあらためて考えます。

当初の想定は合っていたのか

 事業内容を検討していた頃、事業の3本柱として、①大家さん(不動産業者)の関係を構築し、②入居者目線でアパート探しを進め、③地域資源と連携して入居後もフォローしていく、という流れを想定していました。

 いざ事業を始めると、アパート探しに東奔西走。地域限定ながら、このエリアならこの業者さん! と相談できる先も徐々に増えていますが、大家さんとの直接連携は難航。また(40、50代の方が多いためか)アパート入居後も引き続き〈もやい〉との関係を望む声は思いのほか少ないと感じています。

コロナ禍で生じた変化

 そんな中でのコロナ禍。様々な変化が生まれました。

 まず、肌感覚ではありますが、生活保護利用者「検討可」という物件が増えています。「空き部屋を使って」という善意の申し出(但し相談者の希望エリアもあり、マッチングは難しい!)に加えて、リモート勤務の普及や留学生の帰国等で空室が増え、これまでNOとしていた大家さん(業者さん)が門戸を開いた例が見受けられます。

 他方で、相談者の属性として「急に職を失った方」「収入急減で家賃支払いが困難になった方」が激増しました。コロナが収まりさえすれば仕事に戻れる、住まいの質をできるだけ落としたくない、そう考えてギリギリまで頑張ってきた方が少なくありません。ところが頑張ったが故に、家賃滞納や携帯の強制解約に至った方も多く、いざアパート探しを進めると保証会社の審査が通らないケースが頻発。

 その結果、与信を行わない〈もやい〉による “保証”へのニーズが高まっています。

住まい結び事業の進むべき方向

 これまでの住まい結び事業は「住まいを直接探す」取り組みが中心でしたが、相談できる地域業者さんの増加、住居確保困難者に対する門戸の拡がり、さらには “週3営業”が基本となる〈もやい〉の事業体制も踏まえ、今後は住まいの貧困を「社会的に解決する」取り組みへと徐々にシフトしていきたいと考えています。

 具体的には、まず行政に対する政策提言の比重を高めていきます。

 たとえば新宿区や台東区では6000円超を自己負担しても「風呂なし物件」しか検討できないケースが少なくありません。そこで、所定の理由がないと認められない「移管(管轄移転)」の平準化を提言し、より多くのみなさんが良好な環境のアパートに入居できることをめざします。

 またコロナ禍の下で増えたご親族との行き来がない方からの相談、待ったなしの単身高齢者の増加、その一方で保証会社が親族の緊急連絡先を求める傾向が強まっている現状を踏まえ、公的機関が「緊急連絡先」を担うスキームの実現に向けて具体的な提言を進めていきます。

 さらに、住まい結びへの相談をきっかけに意欲が高まり、「自分で部屋を見つけた!」という嬉しい報告も少なからず届くのですが、いわゆる“貧困ビジネス”に捉えられてしまったケースも…。そこで、当事者の方が候補物件について〈もやい〉にセカンドオピニオンを求められる、そんな間接的な支援にも力を入れたいと考えます。

 加えて、過去のトラブルから生活保護利用者などの住居確保困難者へ部屋を貸すのをためらう大家さんが多いという現実を踏まえ、事故率が一般入居者と大きく変わらないこと、リスクを軽減する方法が整備されてきていること等を広く発信していくことも大切と考えています。
千里の道も一歩から。
一つひとつの課題に向き合い、急ぎ過ぎず丁寧に社会を変えていければ、そう考えます。(土田)

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