認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2022.7.22

政策提言・オピニオン広報・啓発事業

「生活保護制度の改善および適正な実施に関する要望」を厚生労働省に提出(2022年7月)

2022年7月20日、NPO法人もやいは厚生労働省に対して、「生活保護制度の改善および適正な実施に関する要望」書を提出しました。これは生活保護制度の原理・原則にかんする内容から細部の実務にいたるまで多岐にわたる包括的な提言書で、2017年より毎年行っています。
毎年追記・修正を重ね、今年度は全72項目、26ページにもわたるものとなっております。

本要望書は〈もやい〉単独で提出しており、団体の基本的なスタンスが表れています。
こちらで全文をダウンロードできますので、よろしければご覧ください。

以下では、重点項目としてかかげたもののうちいくつかをピックアップしてご紹介いたします。

物価高、光熱費等の上昇への対応としての生活扶助費の引き上げについて

ロシアによるウクライナ侵攻、世界的な原材料価格の高騰、そして急速な円安等により、食料品や光熱水費の値上げにより、生活保護世帯の支出が増加しています。こうした状況を踏まえて、生活扶助基準の引き上げもしくは緊急的な給付措置をとることを要請しました。
現状、生活扶助基準は原則として5年に1度の見直しをしており、厚労省としては短期的な経済状況の変化に応じて基準を変えることは難しいという回答でしたが、もやいからは、コロナ禍への対応として地方自治体に対して国から交付されている補助金等の活用や、物価高騰が長期化した場合には次回保護基準変更時に経過的措置をとるようにさらに求めました。

保護費の支給時期について

生活保護法では、保護の開始が決定された場合、保護費は原則として前渡しすることが定められています。具体的には、例えば6月10日に保護を申請し6月24日に保護が決定された場合、6月分の日割分の保護費は速やかに支給し、7月分は6月末もしくは7月頭に利用者の手元にわたるようにしなくてはなりません。しかしながら、実際には上記のような場合であっても、6月分をすみやかに支給せず、7月に入ってからでないと支給できないといわれてしまうようなケースがたびたび見られます。所持金がほとんどないにもかかわらずこのような対応がなされれば、生活ができなくなることは明白です。
もやいからは、こうした生活保護法に抵触するような運用がなされないように、実施機関にたいして働きかけるよう求めました。

生活保護制度利用中の高校進学について

現状の生活保護制度では、保護を利用しながら高等学校に進学することは認められています。しかし、厚労省は高校進学について次のように方針を示しています。

「通常、中学校を卒業して数年以上経過しているような場合においては、就労等によって稼働能力を活用すべき状況にあるものと思われるため、高等学校等就学費の給付対象とはならないものと考えられる。ただし、 当該被保護者がやむを得ない事情によって現に就労していない場合等において、ただちに稼働能力の活用を求めるよりも高等 学校等へ就学することが確実に世帯の自立助長に資すると見込まれる場合に限り、高等学校等就学費の給付を認めることとして差し支えないものとするが、その適用にあたっては慎重に判断するようにされたい」(生活保護手帳別冊問答集 問7-154)

つまり、中学卒業後数年経過している場合には原則として進学は認められず、例外的に認められる場合であっても「やむを得ない事情によって現に就労していない場合等」で進学が世帯の自立助長に資すると認められるときに限られています。
しかし、このままだと中卒で働いていて、高校卒業資格を得て(またそれをもとに何らかの資格を取得し)より高い収入を得られる仕事につきたい人は高校進学が認められにくいことになってしまいます。
これは「自立の助長」という保護の目的と矛盾してしまう状態であると私たちは考えています。
以上のことから、自身の自立のために高校進学を希望する保護利用者が、高校進学できるように運用を改善するように求めました。

まとめ

今回の要望書では、これ以外にもオンラインでの申請受付に向けた環境整備や、夏季加算の創設などさまざまな内容を盛り込んでいます。
制度を変えることは簡単なことではありませんが、少しずつでも改善されるよう、引き続き提言をしていきたいと考えています。

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