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もやいブログ

2023.6.20

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【連載】生活を支えるためのお役立ち情報(保存版)〜第5回 手ごろな住宅か貧困ビジネスか〜

 生活相談・支援事業の結城です。今回は生活保護制度というより、住まいについてのお話です。
日本は公営住宅が非常に少ないため、低所得世帯が住まいを探す際の現実的な選択肢は
民間賃貸住宅以外にほとんどありません。
しかし、とりわけ都市部では2000年代以降家賃が上昇しており、
しかも初期費用が高かったり保証人を求められたりと、
賃貸住宅を確保することは簡単なことではありません。

 手ごろな住宅(affordable housing)が少なくなってきている中で、
2000年代には「脱法ハウス」と呼ばれる類の物件が増えました。
これは主に、「鍵付き施設利用契約」などの名目で契約を結ぶ物件のことを指します。
通常、賃貸住宅を借りる際には「賃貸借契約」を締結し、
これにより「借地借家法」に基づいて借主はかなり手厚い保護を受けることができます。
賃貸借契約を結んでいる場合には、家賃を1か月だけ滞納したからといって
すぐに追い出すことは法的にできませんし、相当な理由がなければ
契約更新を大家側から拒否することもできません。
しかし、鍵付き施設利用契約などの場合にはこれらの保護の対象外となり、
借主側が極めて不利な立場に立たされます。
これらの物件は初期費用が安く保証人などを必要としないことが多いため、
低所得層にとっては入居しやすい反面、悪質な追い出しなどが横行していました。

 その後脱法ハウスの問題点が裁判などを通して明らかになり、社会問題化されたため、
一時期に比べてあまり目にすることはなくなりました。
他方で、2000年の借地借家法改正により、それまでの「普通借家契約」とは異なる
「定期借家契約」という契約形態が認められるようになりました。
定期借家契約は1年以内の短期間の契約が可能で、かつ期間が終了すれば更新はなされず、
継続して住み続ける場合には再契約が必要となります。
定期借家契約はあくまでも賃貸借契約の一種なので、借地借家法の保護が及びますが、
実質的に借主側の保護を弱めるものでした。
近年急増しているシェアハウスなどは定期借家契約を結んでいる場合が多いです。

 しかし最近、シェアハウスという名目で物件の案内を出して、
定期借家ではなく利用契約などを結ばされる事例が見られるようになりました。
同じ「シェアハウス」でも、契約形態によって居住の安定性も変わってきます。
名前だけで判断するのではなく、入居する際には契約形態を必ず確認するようにしましょう。(結城)

QUIZ.
 生活保護制度を利用していて、引っ越しをする際には一定の条件を満たせば入居費用などの一時金が支給されます。転居先の物件を探していて、脱法ハウスの物件を見つけても福祉事務所は一時金の支給を認めないのは容易に想像できますが、転居先物件が定期借家契約であった場合、転居のための一時金は支給されるのでしょうか?

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前回のQuizの解説
 この前のQUIZは、生活保護を利用しながら通信制や夜間大学に進学できるのかどうかという内容でした。生活保護の実施要領では、一定の条件を満たせば「夜間大学等で就学しながら、保護を受けることができるものとして差しつかえない」とされています(実施要領局長通知1-4)。この一定の条件とは、さっくり言えば稼働能力を十分に活用していること、そして就学が世帯の自立助長に効果的であることの2つになります。言ってしまえば、稼働能力を活用した上で「余暇」として夜間大学等に通うことは基本的に自由です。また、夜間大学「等」には通信教育専修学校や各種学校などが含まれます。なお、入学の支度や就学のために必要な最小限度の額については、収入認定せずに貯金することができます(あくまで申告は必要です)。いずれにせよ、通学を考えるならば事前に担当ケースワーカーに相談しましょう。

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