認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2025.5.27

お知らせおもやいオンライン広報・啓発事業

2024年度末をもって〈もやい〉を退職します

生活相談・支援事業担当の結城です。
2024年度末をもって〈もやい〉退職することとなりましたので、ご挨拶申し上げます。

私は2017年2月からおよそ8年間〈もやい〉で職員として勤めてきました。
こういうときの話として失敗談とそこから得た教訓というのが定番かもしれませんが、
私はその種の「成長物語」はあまり好きではないので
今後も踏まえて思い残したことを書こうと思います。

もうちょっとお行儀悪くてもよかったかな

〈もやい〉の生活相談・支援事業には
「憲法に定められた生存権の実質的な保障を求める」という側面があります。
生存権を「実質的な」ものとするための重要な仕組みの1つが
生活保護制度なわけですが、それは法令や通知通達だけでなく、
行政職員の具体的な行動によって運用されています。
そこに問題があれば、生存権は容易に「絵に描いた餅」になります。
そのため、行政が不当な対応(水際作戦など)をしてきたときに
泣き寝入りするのではなく、抗議して制度の正常な運用を促すという意味で、
ときに「お行儀の悪い市民」になる必要があり、
〈もやい〉の活動にはそのような一面があります。

ただし、個人的にはもうちょっとお行儀の悪い市民であっても
良かったのかなと思います。
以下、制度の内側と外側の2つの観点で述べます。

第1に、制度の適正な運用を求めるというやり方は制度の「適正さ」と
「正当性/公正性」の間にズレがあるときに矛盾に直面します。
無論、現行制度の下での適正な運用を徹底させ、
制度に問題があればそれを変えさせる、というのが市民運動のやり方でしょう。

実際、〈もやい〉でも厚生労働省に生活保護制度についての提言をしてきましたし、
多少とはいえ制度の改善が見られました。
しかし、大学進学や外国籍の人びとへの対応など
抜本的な制度改革は全く進んでいませんし、すぐに変わるものでもありません。
そしてそのような状況の中では、相談者に対してできることは
現行制度の「適正な運用」の範囲内でのサポートに限られます。
「それは今の制度では無理です」という言葉を
相談者やボランティアに何度となく言ってきましたが、
私はそれに慣れ過ぎてしまっていたのではないかという気がしています。
現場のレベルにおいても「適正さ」ではなく「公正さ」や「正当性」を
追求することにもっと力点を置くべきだったのではないかと思っています。

第2に、「生存権の実質的な保障を求める」というのは、
国・行政に対する要求である以上、
当然ながら公的な/フォーマルな制度の枠組みの中で、ということになります。
しかし、様々な事情があり、そうした枠組みに乗れない/乗らない人びとがいます。
〈もやい〉に来る人でも生活保護制度を使えない、使わないという人はたくさんいます。
その理由が制度上の不備であることもありますが、
必ずしもそのような理由ばかりではありません。
そのようなときに生活保護制度の利用を「説得」するのでもなく、
いわゆる「見守り」型の支援でもなく、何ができるのか。
〈もやい〉では都庁前での食料品配布など、
インフォーマルな生活支援も行っていますが、
それ以上のことは自分がいる間になかなかできなかったなと思っています。

「公的な支援制度を利用して生活再建する」という
誰もが納得しやすい道筋以外の、もうちょっとお行儀の悪い支援や運動が
できなかったものかと思っています。

今後について

いろいろと勝手なことを書きましたが、退職するといっても
〈もやい〉との関わりがゼロになるわけではありません。
〈もやい〉の活動には関わっていくつもりですし、
その中で思い残したことも引き続き考えていきます。

最後になりましたが、
〈もやい〉で関わりのあったみなさまに改めて御礼を申し上げます。
長い間ありがとうございました。(結城)

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