『ふぇみん』2015年5月25日号「生活困窮者自立支援制度、見えてくる課題は?」に寄稿しました

『ふぇみん』2015年5月25日号「生活困窮者自立支援制度、見えてくる課題は?」に、もやい理事長・大西連の寄稿が掲載されました。

「生活困窮者自立支援法」の施行により、生活困窮者自立支援制度がスタートしました。生活保護の手前に新しいセーフティーネットを構築することを目的とした制度で、2013年12月の生活保護法の改正と同時に成立しました。
制度は具体的に必須事業と任意事業に分かれます。
必須事業として「自立相談支援事業」、住宅確保のための「住居給付金」支援があります。これらはすべての自治体に設置され、生活困窮者の相談支援と、求職者ヘ有期(原則3カ月)の家賃補助を行う事業です。
任意事業は、「就労準備支援事業」「一時生活支援事業」「家計相談支援事業」「子どもの学習支援事業」「その他の自立促進支援事業」があります。

◆就労支援が中心
私たち〈もやい〉は、国が予算をつけてその責任のもと新しい支援制度を作ることを歓迎しつつも、実際に用意された各施策については、さまざまな問題点を含むものであるとして、次のように懸念しています。
◇就労支援に特化した制度であること
◇生活保護の利用を妨げる新たな「水際作戦」になり得る危険性があること
◇必須事業と任意事業に分けられていることで、任意事業が自治体の判断に委ねられ、施策の実施状況に差がでること
また、制度全体として基本的に経済給付の制度が有期の家賃補助のみで、生活を支えるという視点が不十分なこと、すでに働いている低賃金の人は対象外、など大きな問題があります。既存の福祉事務所との連携.協力体制がどれだけとれるかも大きなテlマです。制度上、必要な人は生活保護につなぐこととされていますが、自治体の運用によっては適切な対応をされない可能性もあるのです。
この制度の予算規模は、国が約400億円、地方自治体の負担が約212億円の、合わせて約612億円。何の因果か、13年より削減されている生活保護費の予算削減分と同規模の事業となっています。必須事業は4分の3が国庫負担、任意事業は「就労支援準備事業」と「一時生活支援事業」が3分の2国庫負担で、それ以外の任意事業は2分の1が国庫負担。ですから、自治体によっては財政的な理由で任意事業を行えないところも多いことが懸念されます。

◆東京23区で調査
では、各自治体では実際にどのような体制で、新制度をスタートさせたのでしょうか。
〈もやい〉では、4月1日に東京23区すべてに電話とファクスにてアンケート調査を行いました。
回答を得た21区の結果は以下の通り。
◇区の自立相談窓口の実施主体―42%が直営であり、52%が民問委託(そのうちの約4割が社会福祉協議会。NPOの受託は板橋区のみ)
◇任意事業の実施予定状況―就労準備支援事業は72%、家計相談支援事業は58%、子どもの学習支援事業は72%の自治体で実施予定。
また、生活困窮者の支援に関する方針や実施計画を、区として立てているかという質問には、7割が「立てていない」というものでした。
このアンケートからは、各自治体ともにまだまだ実施体制が不十分である実態が浮き彫りになりました。

◆地域間格差の問題
15年1月27日の厚生労働省「生活困窮者自立支援制度全国担当者会議」の資料によれば、その時点での各自治体での任意事業の実施予定をまとめると、「就労支援準備事業」は33%、「一時生活支援事業」は19%、「家計相談支援事業」は29%、「子どもの学習支援事業」は36%の自治体でしか実施されないことがわかります。
〈もやい〉の東京23区へのアンケート調査では任意事業の実施状況は約7割程度でしたが、全国ではもっと少なく、特に地方にいけばいくほど、任意事業を行わない・行えない自治体が多く存在することがわかります。
全国一律の支援制度と言いつつも、実際は地域間格差、自治体間格差が大きくでる結果となるでしょう。
地方分権の時代に入り、生活困窮者自立支援制度も地方自治体の裁量権が非常に大きい制度となっています。この新制度を生かすには、地域のNPOや地方議会等のがんばりが求められていると言えるでしょう。 あなたの住んでいる自治体の実施状況はどうなっていますか? ぜひ、チェックしてみてください。

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