はじめに

2019年は、台風や大雨をはじめ多くの自然災害に見舞われた年であると言えるでしょう。
この「おもやい通信」を読んでいる方のなかにも被害にあわれた方がいらっしゃるかもしれません。
特に、台風15号と19号は東京近郊を直撃し、幸いなことに〈もやい〉で
保証人や緊急連絡先を引き受けている方から被害の連絡はありませんでしたが、
生活相談に訪れた方のなかに、また、ボランティアメンバーのなかに、
停電等の被害を受けた方がいらっしゃいました。

僕自身も10月下旬の千葉県南部での大雨災害の際には、
偶然その地域を訪れていたこともあり、1時間で約85ミリという
その地点での観測史上1位となる豪雨と、それにより一部冠水した道路を目撃し、
自然の猛威とその恐ろしさを、身をもって痛感しました。
長野や宮城県などでは、被害から1か月以上たった現在でも汚泥の除去作業が進まないなど、
元の生活に戻るにはまだまだほど遠い、などとも報道されています。
災害の深刻さを実感するとともに、いち早い復興と人々の回復を願うばかりです。
被害にあわれた方々に心からお見舞い申し上げます。

これは、9月に〈もやい〉のメルマガにも書いたのですが、
2011年の東日本大震災のあとにおこなわれたさまざまな調査や研究でわかったことのなかに、
「より弱い立場の方が被害を受けやすく、また、そこからの回復に時間がかかる」
というものがありました。
高齢の人や病気や障がいを持っている人は、
避難するのが遅れてしまったり、避難生活に疲弊してしまう。
また、その後の、生活再建に際しては、
経済的な力がある人とそうでない人で、大きな差が開いてしまう……。
日本は自然災害が起きやすい地形や風土だとも言われていますが、
「防災」という観点や「復興」という視点において、
より脆弱な立場に置かれた人々に対しての支援や目線というのは、
忘れられがちですが、とても重要なものです。
しかし、実際には、そういったより脆弱な立場に置かれている人が、
「排除」されてしまう、という出来事が起きました。

台東区の避難所における「ホームレス」の人の受け入れ拒否

10月下旬に関東地方を直撃した台風19号は、
その接近に際してテレビや携帯電話の通知などで繰り返し「いのちを守る行動を」と
呼びかけられるほどの非常に強力な台風で、実際に多くの被害をもたらしました。
台風は、路上や河川敷などで野宿生活をする人にとっては
いのちに影響しかねない危険なものです。
屋根のあるところや雨が吹き込まない場所に避難する必要がありますし、
河川敷に住んでいる人は、河川の増水によって自身の危険があるだけではなく、
荷物なども流されてしまうなどの可能性もあります。
ですので、行政機関や多くのホームレス支援団体などでは、
事前にホームレスの人が多く住む公園や河川敷などを回って避難を呼びかけたり、
ビラを作ってお渡ししたりと、何とか被害を受けずに済むようにと尽力します。
しかし、台東区では、台風の接近にともない設置された避難所において、
ホームレスの人の受け入れを拒否する、という対応をしたことが明らかになりました。
これは、台東区などのエリアでホームレスの人を支援している一般社団法人あじいるが、
「ホームレスの人が台東区の避難所で受け入れを拒否された」と
ブログやSNSで報告したことにより発覚したのですが、
台東区は避難してきたホームレスの人に「住所がない人は受け入れられない」と説明し、
結果的にそのホームレスの人は帰ってしまった、ということでした。

災害救助法には、「平等の原則」と「現在地救助の原則」があります。
「平等の原則」は文字通り、経済的な要件や事情の如何に関わらず
等しく救助を受けることができること、
「現在地救助の原則」は、被災者が現在地において救助されること、
住民はもとより旅行者や訪問者、土地の通過者(帰宅難民など)なども
救助を受けられること、などが明示されています。
これらの原則と照らし合わせてみても、
台東区の対応は決して弁解できない非情なものであったと言えます。
〈もやい〉としても、あじいるが台東区に提出した要望書に賛同しましたが、
台東区のこの出来事のあとに開かれた国会において、
野党議員がこの件について安倍総理に質問したところ、
総理は「各避難所では避難したすべての被災者を適切に受け入れることが望ましい」と答弁をし、
台東区も区長の署名で謝罪の意思を表明しました。

いのちの「優劣」はないはずなのに

台東区では、メディア等での取材に対して、
「ホームレスの人が避難所に訪れるのを想定していなかった」と答えています。
都内でもホームレスの人がたくさん生活している台東区で
「想定していなかった」というのは行政機関の対応として責められるべきことです。
台東区には、今回の出来事を教訓に、地域での防災計画の見直しや、
当事者や支援団体のメンバーの意見も聞きながら、
排除される人がうまれない地域づくりに舵をきってほしいと思います。

また、メディアなどで避難所の設備や状況についてクローズアップされることが増えました。
いくら緊急時の対応だと言っても、多くの人は、体育館にブルーシートを敷いて
毛布にくるまるだけの設備や環境では快適な避難環境とは言えません。
病気がある人、高齢の人、小さな子どもや妊婦さんなど、地域にはさまざまな人が住んでいて、
どの人にとっても身体的にも精神的にも安全安心が守られる避難環境が整えられるべきです。
特に地震などの大規模な災害の発生が予想されている東京・首都圏では、
長期の避難生活を余儀なくされる人が多く発生することも想定して、
地域の防災意識を高めていくことはもとより、そういった設備や備品の調達や配備についても
早急におこなっていく必要があるでしょう。

いのちに「優劣」はありません。
誰もが困ったときに身を寄せられるように、
必要な公的な仕組みや枠組みを、平時の時にきちんと作っていく必要があります。
私たちの活動は一見、災害や防災対策とは無縁に見えるかもしれませんが、
実は根っこの部分でつながっていますし、
そういった提言も含めて、取り組んでいきたいと思っています。
(大西)

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