認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2020.7.24

お知らせ入居支援事業政策提言・オピニオンおもやいオンライン

〈もやい〉でシェルター事業を始めます!(もやい・大西連)

このたび、〈もやい〉では、アパート生活を希望する方の一時的な滞在場所としての「アパート型のシェルター」を始めることにしました。

本事業を始めるにあたり、これまでの経緯と私たちの問題意識、事業の方向性についてお伝えしたいと思います。

お知らせのポイント

・現在、新型コロナウイルスの影響により生活が苦しくなってしまった人が増えています
・〈もやい〉で住まいを失ってしまった人が宿泊できるアパート型のシェルターを始めます
・シェルターに宿泊している方がご自身のアパートを借りるための支援をおこないます
・〈もやい〉の新たなチャレンジへのご支援ご協力をよろしくお願いします

はじめに

私たちは、国内の貧困問題に取り組むNPOとして、生活困窮された方や社会保障制度を必要とされている方への相談・支援をおこなっています。

具体的には、生活相談支援事業として、面談、電話、メール等で年間約4000件の生活困窮者からの相談をお受けしているほか、入居支援事業として、住まいがない方がアパートを借りる際の連帯保証人をのべ2400世帯お引き受けしたり、緊急連絡先を約700世帯お引き受けしています。2018年からは認定NPO法人として全国で初めて「宅建免許」を取得し、住まい結び事業としてアパート探し(不動産仲介)もおこなっています。また、現在は新型コロナウイルスの感染予防の観点から事業の停止や縮小をしていますが、交流事業として週1回の交流サロンの開催やコーヒー焙煎、農業などの社会参加のためのプログラムも実施しているほか、貧困問題を可視化し、社会の仕組みやあり方を変えるために、現場からの情報発信と政策提言にも力を入れています。

このたび、〈もやい〉でアパート型のシェルター事業をスタートすることにしました。シェルター事業の詳細やなぜ今始めるのか、などを以下に書かせていただきます。

 新型コロナウイルスの影響

〈もやい〉では、4月より、緊急の相談体制をしいて、新型コロナウイルスに関連して生活困窮した人への相談活動をおこなっております。

これまでに例えば次のような相談が寄せられてきました。

・ネットカフェ等で寝泊まりしながら派遣労働やテレホンオペレーターの仕事をしていたが、仕事を切られ、生活できなくなった。

・ネットカフェ等で生活していたが、新型コロナウイルスの影響で観光業関連の仕事(清掃など)が減少した。他の仕事を探したが見つからずお金がなくなった。

・イベント警備などの仕事をしながらマンガ喫茶等で寝泊まりしていたが、イベント自体がなくなり警備の仕事もなくなってしまった。

・いつも使っているネットカフェが休業になって居場所を失ってしまった。仕事も減ってホテルなどに泊まることも難しく困った。

・アパートに住んでいたが、キャバクラの店が休業になってしまい、収入が減少して家賃が払えなくなってしまった。

・食品の販売とイベント関連の事業を経営していたが、新型コロナウイルスの影響で仕事が減少して困っている。

・音楽関係の仕事とバイトで生計を立てていたが、収入が減少して生活が成り立たなくなってきた。

(上記の内容は個人が特定されうる情報をはぶき、かついくつかの相談内容を組み合わせたものとなります。)

個別の状況はさまざまながら、新型コロナウイルスに関連した休業等のみならず、急速な経済状況の悪化により失業や収入が減少した方が多くいる現実に日々直面しています。

※ 臨時相談会中間報告についてはこちら

臨時相談会中間報告2020.7.3

 

住まい探しのニーズの高まり

失業したり収入が減少するなかで、住まいを失ってしまう方も多くいます。また、4月7日に緊急事態宣言が発令され、その後、東京都がネットカフェ等に休業要請を出したこともあり、「ネットカフェ難民」とよばれる人たちの多くも寝場所を失う状況となりました(東京都の調査によれば「ネットカフェ難民」は一晩で約4000人いると言われています)。

東京都は、ビジネスホテルの借り上げ等をおこない、宿泊場所の確保のための支援をおこないましたが、広報等が必ずしも十分ではなく支援を利用できなかった方々も多く、また、ビジネスホテルに宿泊している方々のその後の住まいの確保についても追いついていないのが現状です。

また、住まいがない方の緊急的な宿泊先としてこれまで活用されてきた「無料低額宿泊所」などの民間の施設は、都内はまだまだ複数人部屋のところが多く、個室の環境であっても、トイレやお風呂、食堂などは共用です。感染予防の観点からもこれまでとは違う一時的な宿泊場所の確保が必要となっています。

多くの方がそういった「施設」を経由せずにアパートに入居したいと希望していますが、実際には都内などでは住まいがない方が生活保護を申請した場合に、すぐさまアパート入居することは認められず、そういった「施設」への入所を求められてしまう運用があります。東京都が確保していたビジネスホテルに宿泊していた方で、次の住まいが見つからず、こういった「施設」への入所を求められた方もいます。

そして、これは以前からの課題ですが、自分でアパートを探しても、生活保護を利用している方は入居NGと不動産屋さんや大家さんに言われてしまう、携帯電話や身分証を持っていない、保証人や緊急連絡先が用意できないなどの理由により、ご自身でアパート契約まで進めることができない人が多くいます。

 

住まい探しのオンライン相談を始めました

〈もやい〉は、先述の通り、2018年に住まい結び事業をスタートしてからの2年間で、約160名の方の住まい探しのご相談をお受けしてきました。

しかし、物件探しは、面談での相談だけではなく、一緒に物件候補に内見に行くなど、密に接する機会や時間がどうしても発生してしまいがちです。4月以降、新型コロナウイルスの感染拡大と東京都による緊急事態宣言を受けて、住まい結び事業の活動は一旦停止していました。

こうした経緯がありながらも、住まい探しのニーズの高まりを受け、6月中旬にオンラインツールであるフォームを使った住まい探しをスタートしました。

住まい探しのオンライン相談始めます!2020.6.17

住まい探しのオンライン相談をはじめて約1か月で40名近い方からのアパート探しの相談が寄せられています。一方で、課題も見えてきました。

 

住まい探しをおこなうなかで直面した課題

住まい探しのご相談をお受けするなかで、新型コロナウイルスの感染拡大以前から、収入が少ない人、安定した職に就けていない人、病気や障がいがある、高齢である、などの理由で、住まいの確保に苦労する人はたくさんいました。また、アパートは見つけることができたとしても、それに一定の期間時間がかかってしまい、それまで「施設」などに滞在することを余儀なくされる方が多くいました。

また、これも従前からの課題なのですが、写真付きの身分証(マイナンバーカードや運転免許証など)を持っていないなどの方がアパート契約のための審査に通らない、という問題があります。ホームレス生活やネットカフェ生活をしてきた方のなかには、そういった身分証明書を持っていない方も多いのですが、それらの発行や再発行には少なくとも1か月以上かかるのが一般的で、早期のアパート入居を阻むハードルになっています。

さらに、一般的にビジネスホテルなどでは住民登録ができないこともあり、「身分証」を確保するために望まずに「施設」に入らなければならない、という選択を迫られる人もいます。

 

生活困窮者の住まい、における「ニューノーマル」

新型コロナウイルスの感染拡大により、これまで主に都内などの都市部でおこなわれてきた「施設」を前提とした支援は限界を迎えつつあると思います。

誰もが自分のアパートで生活することができる、それを新しい当たり前「ニューノーマル」にしていく必要があると考えています。

〈もやい〉としては、これまで住まいのない方への支援活動をおこなうなかで、いわゆる「施設」以外の受け皿が少なく、多くの方が望まずにそういった「施設」に滞在せざるを得なくなっていること、本来はアパートでの生活ができる方が、アパート生活に移行できていないことに大きな懸念を感じてきました。実際に厚労省や東京都等にも何度も要望をしてきました。

もちろん、「施設」のなかには、環境が良く、丁寧なケアをおこなう「施設」もありますし、日常生活に不安を感じている方など、「施設」での生活のほうが安定した生活を営むことができる場合もあります。ですから、「施設がいけない」、と杓子定規に言いたいわけではありません。ここで重要なのは、残念ながら「施設」以外の選択肢があまり用意されていない、ということと、環境の良くない「施設」が一定程度存在している、ということに尽きます。

 

これからの支援に必要なこと 緊急的な宿泊先としてのビジネスホテルとアパート移行のための滞在先としての施設ではないシェルター

今回、緊急事態宣言にともなう休業要請への対応としてではありますが、東京都が「施設」ではない選択肢としてビジネスホテルでの緊急宿泊を用意する、という今までにない取り組みが実現しました。残念ながら7月に入り、ビジネスホテルの延長は限定的になりましたが、今後も、緊急宿泊としてのビジネスホテルの活用は恒久化していく必要があると思います。

そして、先ほどの話と少し重複しますが、ビジネスホテルに宿泊している方のなかで、「身分証」などがなく、すぐさまアパートに移ることが難しい方が多くいることが明らかになってきました。そういった方が、「身分証」などを確保し、落ち着いてアパート探しをするためのこれまでの「施設」とは違う「仮の住まい」が必要です。

以上のことを踏まえて、〈もやい〉では、この「仮の住まい」を実現するために、アパートの部屋を借り上げてシェルターとして提供するモデル事業を始めようと考えています。

 

アパート型のシェルターを始めます

このたび、〈もやい〉では、アパートの部屋を借り上げて、アパート生活を希望する方の一時的な滞在場所としての「アパート型のシェルター」を始めることにしました。

シェルターと言っていますが、いわゆる「アパート」です。門限もありませんし、複数人部屋などでもありません。住民票を置くこともできます。そこに滞在している間に、ご自身の名義のアパートに移る(借りる)ための準備をすることが目的です。3万円で借りて5万円で貸す、といったこともしません。あくまで、モデル事業としておこない、政策化が目標です。私たちのような民間のNPOが自主的におこなうだけ、ではなく、政策化してそれこそ「ニューノーマル」にしていくことを目指しています。

スタート時期やその内容についてはまた別途お知らせしていこうと思っていますが、現在、具体的な準備に着手しています。

また、政策化を目指していくにあたり、〈もやい〉だけではなかなか大きな動きを作っていくのは難しいと思っています。一つの団体でできる実践には限りがありますし、金銭的にもマンパワー的にも地域的にも限界があります。

 

政策実現を目指して 抱樸と協働します

現在、住まいのない生活困窮者を支援する全国の多くの団体で、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、相談体制や方法、シェルター等の設置をおこなっているところはその環境整備や運用の在り方について、「変化」を求められています。

北九州にある認定NPO法人抱樸が、アパートを借り上げての「支援付住宅」を政策化するべくモデル事業をおこないたい、と全国の支援団体に呼びかけていて、〈もやい〉も一緒にやらないか、と助成のお誘いを受けました。

抱樸が準備している「支援付住宅」は、一時的と言うよりはある程度長い期間住むことを前提としてアパートを借り上げて提供する、というものなので、あくまでご自身のアパートを借りるまでの住まいの提供を考えている〈もやい〉とは少し異なる部分があります。

しかし、抱樸が上記の私たちのビジョンに共感をしてくれたこともあり、このたび、政策実現に向けた協働をおこなうことにしました。地域ごとのニーズの違いや、その支援団体の財政規模、支援の担い手の状況等はそれぞれなので、協働するなかで見てくることについても、発信や提言につなげていきたいと思っています。

 

もやいのシェルター事業へのご支援・ご協力をお願いします

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかで新たな事業をおこなうことは、〈もやい〉にとっても非常にチャレンジングなことです。しかし、「新しい当たり前」を創っていくために、いま私たちはこの課題に取り組む必要がある、と考えています。

一方で、もやいシェルター事業のスタートにあたり、多くの方のご支援・ご協力を必要としています。毎回の寄付のお願いで恐縮ですが、よろしくお願いします。

〈もやい〉の活動を寄付で支援する

また、住まい探しやシェルターの開設にあたり、協力してくれる不動産屋さんや大家さんも募集しています。こちらも、ご連絡いただけますと幸甚です。

〈もやい〉の新しい挑戦に、引き続き、ご注目ください。

以上

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 大西連

 

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